UGOKUCHI:39
UGOKUCHI COLUMN

発音記号(IPA)とは — 読めると何がいいの?

2026-08-02・draft(英語科・ネイティブ監修前)

英語の辞書を引くと、単語のとなりに /θɪŋk/ のような不思議な文字列が載っています。読み方がわからなくて、そっと目をそらした経験はありませんか。あれが発音記号です。正体さえわかれば、これほど頼りになる道具はありません。

発音記号(IPA)とは

発音記号は、「この文字をこう読む」ではなく「この音をこう書く」と決めた記号のセットです。世界共通の方式として使われているのが IPA(International Phonetic Alphabet・国際音声記号)で、日本の英語辞書や教科書の発音表記も、このIPAをもとにしています。

think/θɪŋk/θNo.24舌先を歯にはさむɪNo.04力をぬいた「イ」ŋNo.35鼻へ抜く「ン」kNo.20のどの奥ではじく
think /θɪŋk/ の設計図 — 記号1つが「口の動き1つ」に対応している

ふつうのアルファベットとの一番の違いは、1つの記号が1つの音に対応すること。英語のスペルでは同じ「a」でも、cat・cake・father でぜんぶ違う音になりますが、発音記号なら /æ/・/eɪ/・/ɑː/ と書き分けられます。逆に、スペルが違っても音が同じなら、同じ記号で書かれます。

  • スペルは「単語の見た目」、発音記号は「音そのもの」を写す
  • 同じ記号は、どの単語に出てきても同じ音
  • 記号の形は見慣れないものもあるが、英語でよく使うのは 39個ほど

カタカナで書けない音がある

「発音記号なんて使わなくても、カタカナでいいのでは?」——実は、カタカナは日本語の音を書くための文字なので、日本語にない音は原理的に書けません。

たとえば think の最初の音 /θ/ は、舌先を前歯で軽くはさんで息をもらす音です。カタカナで書くと「シンク」ですが、それでは sink(沈む)と同じになってしまいます。hat と hut と hot も、カタカナではぜんぶ「ハット」。別の音なのに同じ表記に潰れてしまう——ここがカタカナの限界です。

hat/hæt/帽子hut/hʌt/小屋hot/hɑːt/熱いハット3語とも同じ表記に…
カタカナに直すと、3つの違う母音の区別がまるごと消えてしまう
グル
グルカタカナで書けない音があるなんて…。今まで、ぜんぶ書けてるつもりでした。
ニコ
ニコ無理やり書くと別の単語に化けてまうねん。think が sink、hat が hot にな。
グル
グルじゃあ僕のノートの「シンク」は、ぜんぶ「沈む」だったんですか…。
ニコ
ニコ落ちこまんでええねん。音をそのまま写せる文字が、ちゃんと用意されとるから。

読めると何がいいの?

発音記号が読めるようになると、一番変わるのは辞書の使い方です。

  • 辞書が「音声機器」になる — 知らない単語でも、発音記号を見れば正しい音の設計図がわかる。音声ボタンを探して再生しなくても、目で見て口が動かせる
  • 「読めない単語」がなくなる — スペルからの推測に頼らないので、初見の単語でも自信を持って声に出せる
  • リスニングにも効く — 自分で出せる音は、聞き取れる音になっていく。発音記号は「音の聞き分けの地図」でもある

スペルと発音のズレが大きい英語だからこそ、「音そのものを書いた文字」が読める効果は大きいのです。

まず39個だけでいい

IPAには世界中の言語の音を書くためのたくさんの記号がありますが、英語の発音でまず必要なのは39音。母音が15個、子音が24個です。

短母音æʌɛɪʊ長母音ɑːɔːiːuːɝ二重母音aʊaɪeɪoʊɔɪ破裂音pbtdkɡ摩擦音fvθðszʃʒh破擦音tʃdʒ鼻音mnŋ接近音lɹwj
英語の発音でまず必要な39音。この一つひとつに触れる断面模型がある

そして発音記号は、暗記するものではなく口の動きとセットで覚えるものです。ウゴクチでは39音すべてを「触れる断面模型」にしました。記号を1つ選んで、舌がどこにあるか、口がどう開くかを、指でなぞりながら確かめられます。